市川高夫先生の手荒れ防止マニュアル
(作成に皮膚科の丸山友裕先生の助言をえました)
医療従事者の手指を介した微生物の伝播が院内感染の原因の一つであることは周知の事実である。
この経路による院内感染を防ぐためには、一処置ごとに手洗いを行うことが医療従事者の鉄則といっ てよい。
聖路加国際病院で、床の消毒、ガウンテクニックなど他の対策は何も変えずに、手指消毒剤による 手洗いの強化のみを行ったところ著明にMRSAの検出率が下がったという。
手洗いが必要なことは分かった。
しかし頻回の手洗いで手荒れがおきるのも事実である
●手荒れがおきるメカニズムは以下の通りである。
手指の皮膚は皮脂腺から分泌された皮脂と汗腺から分泌された水分が乳化しクリーム状となり、皮脂膜として皮膚を保護している。
手洗いによりこの皮脂膜がはがされ、その下の角質の水分が蒸発してしまい、乾燥してかさかさにな る。
頻回の手洗いにより回復しかけた皮脂膜が再び除去されてしまう。
このように水分を失い柔軟性を失った皮膚は乾燥状態から落屑、角質の硬化、亀裂、紅斑、痒みといっ た症状がでてくる。
これが手荒れである。
日常生活のおいて手あれを防ぐには手の脂分を取りすぎないことと、機械的刺激を避けることが重 要である。
軽度の手荒れやアトピー性皮膚炎がすでにある人は実行する必要がある。
手の脂分がとれすぎる最大の原因は食器洗いの洗剤である。
食器洗いの際に手に持ったスポンジに 洗剤の原液をつけて洗うのは厳禁である。
この方法では高濃度(10〜20%)の洗剤により、瞬く間に 手の脂分もとれてしまう。
洗い桶に冷たい水を張り、洗剤を溶かし(1%未満)、この中で洗うのが正しい。
お湯も手の脂を溶かすので、冷たい水のほうが良い。
手荒れが始まるとゴム手袋を使用する人が多いが、これも注意を要する。
ゴムは古くなると硬化し、かぶれやすくなる。
当初手のひら側のみだけだった手荒れが手背におよんで来たら、ゴムのかぶれを考える必要がある。
安全なのはナース用のディスポのポリエステルの手袋で、かぶれる危険性はほとんどない。
破れるたびに使い捨てとし、どんどん新しいものを使用する。
売店で20組み入り380円で売っている。病棟のものを盗んではいけない。
同様の理由で洗髪時もこの手袋を使用する。
入浴時もずっとしていればさらによい。
または、綿性の布の手袋をしたまま、ゴム手袋・ポリエステル手袋をはめてもよい。
手荒れが起きてしまった場合はこれを治療しながら仕事を続けざるを得ない。 以下にその治療法を示す。
乾燥、角質の硬化には5%サリチル酸ワセリン軟膏(処方時そのまま)の使用が一般的である。
これは手の表面に脂の膜を作り水分を保ち、角質を柔らかくする。しかしべたつくので勤務中の使用 には適さない。
そこで、べたつかない保湿剤として尿素軟膏(パスタロンソフト25g)、ヘパリン類似物質(ヒル ドイドソフト軟膏20g)、ビタミンA油(ザーネ軟膏20g)等を勤務中に使用し、寝る前に
5%サリチル酸ワセリン軟膏を使用するのが良い。
外用剤使用のポイントは頻回に塗ることである。
保湿が目的であるので、常に手指に軟膏が付着し ていなければ意味がない。
そのためには外用剤を常に携行し、皮膚が乾燥するたびに塗る必要がある。
あまり知られていない意外な方法として、ウェットラップ法がある。
これは手洗い後、まだ手がびしょびしょに濡れたまま外用薬(ワセリン系)を塗り、その後であまっ た水分を拭き取るのである。
この方法は適度の水分を角質に与え、乾燥状態を良く改善する。
手指に亀裂を生じたり、爪の横がささくれた場合カットバン(祐徳薬品工業鰍フ登録商標)を張る人がいるが、これは百害あって 一利なしである。
過剰の水分が閉じ込められ、角質はふやけ、その結果更なる皮脂膜の脱落を来し、手荒れを確実に悪 化させる。
亀裂に対するオーソドックスな治療は5%サリチル酸ワセリン軟膏やステロイド剤を薄く塗った上 から、
リント布に厚く伸ばした亜鉛華軟膏(サトウザルベ)を貼ることである。
また密封療法としてステロイド軟膏を塗布し、サランラップで密封する方法もある。
しかしこれらも勤務中は不可能である。
そこでこの方法は夜間のみとし、日中は以下のようにする。
ステロイド含有テープ剤(ドレニゾンテープ等)を楕円形に切り、放射状に切れ目を入れて(この操作をしないと剥がれやすい)乾燥させた亀裂部に貼る。
剥がれて困る人はこの上からカットバン(祐徳薬品工業梶jを貼っ てもよい。
ただしカットバン(祐徳薬品工業梶jが皮膚に直接付着しないようステロイドテープを充分広く貼る。
また、これも不可能な人は市販の「水ばんそうこう」で亀裂を塗り固める。
商品名としてはコロスキ ン、ユースキン、アーチスキン等がある。
要するにセメダインで接着するようなものである。
はじめて塗った時はしみるが、剥がさずにくり返し塗り固めるとよい。 これで痛みに対処できる。
ただし乾燥部に広範囲に塗ってははがし、塗ってははがしを繰り返すと悪化するので注意。
またこれらの方法でも改善しない場合は、外的刺激から徹底的に回避するため、常に手術用手袋ま たはディスポのポリエステルの手袋をする。
この方法は一種の密封療法になるので悪くはない。
この際に手袋そのものにかぶれぬように注意。
また蒸れすぎて悪化せぬよう注意を要する。
爪の周囲の荒れも問題になります。
爪は爪床という皮膚の上に乗って一日平均0.1mm先端に向かって 伸びています。
爪根から爪先まで完全に再生するのに健康な人で最低4〜5ヶ月、高齢者で8〜9ヶ月かかります。
爪に悪影響するものとして、栄養分の不足、洗剤や薬品、病気、精神的要因、間違ったケア、遺伝 的素質、細菌感染、老化現象など。
爪の健康度は質、ツヤ、弾力でみます。 小爪(爪半月)の大きさは遺伝的要素が大きく、健康度とは関係ないようです。
これは爪母で作られ てまもない部分で、水分を多く含んでいて白く見えます。
ネイルケアに必要な道具を紹介します。
ささくれ、古い 甘皮、爪の横に見られる古い角質などを取り除くもの。
オレンジウッド スティックできれいにならない場合、もうすこし甘皮を押し上げるのに使う。
爪や甘皮、その周囲の乾燥を防ぐ専用オイル。
正しく使っていると甘皮の ささくれ立ちがしなくなる。(約3000円弱)
古い甘皮を柔らかくし、 後爪郭部の汚れや古い角質を取り除く液体。クリーム状のものもある。
お風呂上がりが最適。エメリーボードで形を整える。
爪切りは二枚爪などの原因になりやすいとい われる。
エメリーボードは爪に対して45℃の角度を保ち必ず一定方向にのみ使用する。直角には当てない。
甘皮はスティックで丁寧に小さな円を書くように押し上げる(浮かすようにしてはならない)。
甘皮の状態が良くない時は無理をせず少しずつ回復させること。
強く押して爪根を傷つけてしまわな いように。 爪の弱い人はスティックに薄く綿をつけてもよい。
ささくれがあったらキュティクルニッパーで端が残らないように切る
(甘皮は爪から離れ浮いた状態 のルーズスキンになった時のみ切除すること。 不必要に深く切ると感染の原因となる。)。
ガーゼかタオルで爪の周囲をきれいにふき、キューテイクルオイルをたっぷりつける。
親指で爪甲、爪郭、甘皮を円を書くようにマッサージする。総ての指に対して行う。
蒸しタオルで手を包み、約一分した所でハンドクリームを塗り、指を回転させたり、爪のツボを押し たり、手から指先にかけてマッサージする。
(手のマッサージはゼネカ薬品のビデオが看護部にあります)