INFECTION CONTROL, 2001 VOL.10 5月号、490-491ページ,メディカ出版
Q.気管吸引時における、感染防止について教えてください。
ちなみに、当病棟では、未滅菌のディスポ手袋を使用し、蒸留水は使っていません。
吸引しにくいのですが、滅菌の鑷子立てを使用し、一回毎に鑷子を交換して使用しています。(Hさん他多数)
APIC(米国感染管理専門家協会)のテキストは気管吸引にともなうリスクについて、
1. 気管吸引カテーテルは、微生物を下気道に押し込む。
2. 吸引カテーテルの使用は、直接的に患者環境の汚染を招く。
3. 手袋について、滅菌あるいは未滅菌のいずれを使用するべきかについての推奨はない。
以上の3点をあげています。
また、気道吸引時のカテーテルの扱いについて、
気道吸引は、「滅菌の1回使用のカテーテル」で『無菌操作』を行うべきであること、
もし、吸引中にカテーテルの汚れを落としたいときには、滅菌水を使うべきであること、
使用後は注意深く廃棄すること、と述べています。
気管内に使用する水は、水道水中に存在するおそれのある非結核性マイコバクテリアやレジオネラなどの汚染を防ぐために滅菌水が適切です。
鑷子の使用については、無菌操作を確実に行うという意味では正しいことであると考えます。
しかし、1本の鑷子を何回も使い回すということであれば、確実な無菌操作の妨げになるでしょう。
人工呼吸治療を受けている患者が、病院感染肺炎を発症する危険性は、受けていない患者の6〜21倍高く、1日あたり1%の割合で肺炎となる可能性が増加しています。
これは、挿管チューブを介しての菌の気道への移動によるものです。
今、私たちの行っている気道吸引テクニックを吟味したとき、これらのテキストの基準は厳しすぎるとするのか、
あるいは現在のテクニックの質をあげるための目標とするのか、それぞれの現場で検討していただきたいと思います。
Q.吸痰手順について、マニュアルを作成しています。アドバイスをお願いします。(Kさん)
まずは、Kさんの病棟で行っている手順を紹介します。
<Kさんが準備しているもの>
ディスポのサクションチューブ、アルコールワッテ、ディスポの手袋(未滅菌)
<Kさんの手順>
1.ディスポの手袋を利き腕に装着する。
アルコールワッテで、ディスポのサクションチューブをつかみ、反対の手で吸引圧がかからないようにして、気管内挿管チューブにサクションチューブを挿入する。
2.チューブを回転させながら吸痰する。チューブ表面をアルコール綿で拭き取る。
3.口腔・鼻腔吸引を行う。
4.チューブを破棄する(バケツの中の消毒液を吸って、中に捨てる)
<浦野先生のアドバイス>
手順を作成する場合には、前項の、「滅菌の1回使用のカテーテルで無菌操作」を前提にしましょう。
1.まず、石鹸と流水での手洗いが必要です。
患者、あるいは患者の装着している器材に触れる前後には、必ず手を洗わなければなりません。
気道吸引は、「侵襲的医療行為、創傷に触れる前後、手に微生物汚染が予想される医療行為の後」などの手洗いの必要な行為にあたります。
2.手袋は滅菌、非滅菌のいずれでもよいのですが、やはり、両手に着けましょう。
3.アルコールは不要です。ディスポーザブルの吸引カテーテルは、「滅菌の1回使用」が原則です。
アルコールの使用は「消毒レベル」であって、無菌操作が必要とされる「無菌レベル」の維持ではありません。
4. 吸引カテーテルを洗浄したい場合には、滅菌水を吸引し、操作を続行します。
5.カテーテルを破棄する場合には、消毒薬を吸引する必要はありません。そのまま、指定の容器に捨てます。
CDCガイドラインには「ディスポーザブル製品の再使用によって病院感染が増加したという報告はないため、
ディスポーザブル製品の使用をすべて禁止できないが、安全性や有効性が損なわれる製品は再使用するべきではない」と記載され、
これは世界のスタンダードになっています。
しかし、日本では、各施設の慣習やコスト面 での問題ばかりがクローズアップされ、「同じカテーテルを1週間使用」する状況もめずらしくありません。
気道内吸引という手技に、最新で、最善の根拠を与えるために、コストの問題も含めて再検討していきましょう。