ICHG研究会編「滅菌・消毒・洗浄ハンドブック」(メディカルチャー刊)

126pageから引用

(2)電解酸性水について

最近、病院において「あらゆる微生物に対し効果のある万能な水」、「残存性がなく安心」、
「器械を購入すれば手軽に手に入る」等の理由で、殺薗作用のある水が、環境・器具・内視鏡の消毒、さらに褥瘡のケア等幅広く用いられている。
その水は、強酸性電解生成水溶液、電解酸性水、強酸性水、超酸化水、強酸性イオン水、酸化電位水、アクア酸化水等と呼ばれている
(ここでは「電解酸性水」と呼ぶ)。

■電解酸性水の作用機序

電解酸性水は、水道水に微量の食塩を添加し、電気分解したとき、陽極側に塩素・酸素
を生じるためpH2.7以下の溶液として得られる水である。
殺微生物機序は、pHと酸化電位の作用に加えて、次亜塩素酸によると考えられている。
水中でのCl2の電離は次の式で表される。
Cl2+H20→HCl+HOCl→HCl+H++OCl-
pHが高くなると解離が進み、右側へ移行する。pH2.7付近では90%程度がHOClとして存在する。
このときHOCl→HCl+*Oとなる過程で酸化力が発揮され、この高い酸化力が微生物のたん白質を変性させることにより効果があらわれる。
電解酸性水の効果の指標として、酸化還元電位、pH、残留塩素が挙げられるが、本質的
には残留塩素の影響が最も大きい。

■in vitroと in vivo

試験管内において電解酸性水は、あらゆる微生物に対し有効性を示している。そして、このデータが一人歩きしているという現実がある。
その反面、有機物の存在下においては種類や量によって電解酸性水の効果に大きく影響がでることが明らかになっている。ここで
重要な点は、前ぺ一ジの例1、例2にあるようにin vitroの成績がすべてではないことである。
消毒剤の使用においては種々の要因によって、濃度の低下、それによる効果の低下が
生じる。現在日本で承認されている消毒剤を使用する際の濃度・温度・時間に関しては、
in vitroでの結果だけに基づいているものではないことをよく理解したい。

■電解酸性水の実用性

電解酸性水の保存は、次亜塩素酸の性質から判断すると冷暗所保存、また、濃度を考慮するとガラス瓶が望ましいと考えられる。
人体への使用については、水道水を原料にしていることからみても体腔内や創に使用す
るのは問題である。厚生省認可の適応は2Lの本剤を用いて2分間の手指消毒である。
実際の使用に際しては、同じ有効成分である次亜塩素酸の場合と比較すると上述のよう
に電解酸性水の有用性の限界がはっきりする。さらに、機器の購入費用や、メンテナンス
等を考えると、次亜塩素酸ナトリウム製剤を使用する方が経済的である。