「疥癬の診断と治療」
国家公務員共済組合連合会 九段坂病院 大滝 倫子 先生
疥癬とは
- 疥癬はヒゼンダニという小さなダニが皮膚に寄生して起こる感染症である。
- 流行のサイクルは30年周期と云われていたが現在はこれが当てはまらない。
- もともとは性感染として始まったが、現在は高齢者とその介護者に発病が多い。
- 病型には普通の疥癬とノルウェイ疥癬がある。
ヒゼンダニの生活と産卵場所
- ヒゼンダニの生活環は10〜14日
- 成虫の体の長さはメス0.4mm
- 幼虫は足の数3対 成虫は4対
- 一匹のメスは多いと100ヶ位の卵を産む
- 皮膚角層内の疥癬トンネル内で卵を生む。
- 疥癬トンネルは手〜手首(60%) 足 陰部 腋窩にある。
- ヒゼンダニが生存しているのは皮膚の角質層のみで、それより内側には入らない。
- 皮膚から落ちて畳で増えることはない。落ちたら死ぬ。
- 血液は吸わず、角質の垢を食べる。
- 手や指に疥癬トンネルをつくり、先端の小さい水疱のあるところにメスがいて卵を生んでいる。
疥癬の症状
1.腹部の小丘疹 2.陰部の結節 3.手指の疥癬トンネル
- 陰部の結節は疥癬を疑う。
- 虫が死に絶えても結節は残る。一種の後遺症で疥癬の薬は効果はない。
- 感染して無治療で放置すると寄生するダニの数は3ヶ月をピークに次第に減少し6ヶ月では治癒するが、
その間夜も眠れない痒さを伴う皮疹が続き、人にもうつすので治療が必要である。
感染経路
1)普通の疥癬から
1.直接感染
- 性感染症としてうつるがこれも短時間ではなく、一夜を伴ににする位の長さ一緒に居ないと感染しない。雑魚寝するとうつる。
食事や入浴をいっしょにするくらいではうつらない。
- 畳の部屋で雑魚寝の場合は、29人中23人が感染。ベットの部屋では29人中1人のみ
- 手を長いことつなぐと(数時間つなぎ続けると)、うつることもある。
2.間接感染
生存期間(人体から離れて)
25℃ 湿度90% 3日間
25℃ 湿度30% 2日間
12℃ 高湿度 14日間
- これは生存したという記録にすぎず、感染可能期間ではない。ほとんどは人体から離れて、ほどなく感染の可能性を失うものと考えてよい。
2)ノルウェイ疥癬から
診断
- ヒゼンダニ検出方法の第一は疥癬トンネルをみつけること。
- 赤い発疹にはいない(アレルギー反応)。
- 疥癬トンネルの6割は手や指にいる。
- 眼科用曲剪刃で血がでるくらいの深さで切りとり、鏡検する。
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| 疥癬 | ノルウェー疥癬 |
| 寄生虫 |
100個以下 | 100万〜200万個 |
| 免疫 |
正常 | 低下 |
| 感染力 |
弱い | 強い |
| 痒み |
強い | 不定(かゆくないことがある) |
| 症状 |
丘疹が基本 結節は7% 首から下のみ |
角化(紅皮症様のこともある) 全身(首から上もできる) |
ノルウェイ感染
白血病など悪性腫瘍 HIV
免疫不全 免疫抑制剤使用中
副腎皮膚ホルモンの使用
外用ステロイド剤の使用
ノルウェイ疥癬の特徴
- 角化が著明できたなくかさぶた状となる。
- 爪水虫や紅皮症のようになることもある。
- 疥癬とノルウェイ疥癬の原因のダニは同じヒゼンダニである。
- 炎症性反応がなく、かゆがらないこともある。
- 腎不全をおこすこともある
- 老健施設などこの集団発生はほとんどがノルウェイ疥癬を感染源としている。
- ノルウェイ疥癬から感染する場合は潜伏期は一週間くらいで発症する。
治療
- 国内の外用剤としてはイオウ剤、安息香酸ベンジル クロタミトン(オイラックス)がある。
- イオウ剤のムトーハップは使いすぎでかぶれが多く、最近では予防効果もないことが分かって来たので使わないほうがよい。
- 外国では1% γ−BHCや5%ペルメトリンクリームが使われている。
後者はピレスロイド系殺虫剤(除虫菊)の一種で5%クリーム剤を全身に塗り8〜14時間して入浴し、洗い落とし91%有効 - 外国では経口剤 イベルメクチンが広く用いられている。疥癬 一回服用 ノルウェイ疥癬 二回服用
治療の一例
疥癬
- オイラックスを頚から下の全身にぬる 7日間くり返す。又は
- 一週間に一度1%γ−BHCを使用(一人につき20g(γBHC200mg))。
- 一度で充分であるが、場合によっては1週間後に再度使用。原則として2回に限る。
ノルウェイ疥癬
- 一週間に一度1%γ−BHCを。あと6日はオイラックスをつけ1クールとする。
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治療上の注意
- 首から下の全身に塗る。かゆいところに虫はいない。足をわすれない。
- オス 幼虫 成虫は体のどこにいるかわからない。メスしか居場所がわからない。
- 年寄りの場合は首から上も全身にぬる。
- 疥癬の薬は全て一種の殺ダニ剤なので、不必要に長期、大量に使わない。ダニが死んだ時点で薬は必要ない。疥癬の薬はかゆみどめではない。
- γBHC原則としては基剤はワセリンとすること。経口より毒性がますので決してローション剤などにしてはいけない。
γ-BHCは一ヶ月以内に二度以上使用しないこと。びらんには使わない。
- γ−BHCは国内では使用が禁止されている。Drの全面的な責任のもとに使われるることになる。
- ムトウハップは効果がない割にかぶれをおこすので使わない方が良い。
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ヒゼンダニは死に絶えても、体のかゆみが長いことのこることがある。かゆみはオイラックスを含め疥癬の薬は無効である。
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結節ができるのは疥癬患者の7%であり、これはリンパ球のかたまりで、ダニが死んでも半年以上続くことがある。これは疥癬の薬は効かない。
- 夫婦・親子の一人が疥癬に感染し、同室に布団を接して寝ている場合は予防的に治療する、
その場合潜伏期が1ヶ月はあるので発症する前に予防的に治療することで相互感染が防げる
集団発生時の注意
- 集団発生したらノルウェイ疥癬のみ隔離をする。 普通の疥癬患者は隔離の必要はない。
- ノルウェイ疥癬から感染した普通の疥癬患者も隔離の必要はない。
- 隔離期間は1〜2wで充分。
- 隔離室の作業は布の予防衣で行う。
- ヒゼンダニは50℃、10分で死ぬので、ノルウェイ疥癬患者の衣類などは熱処理する。
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隔離病室は、ピレスロイド系薬剤を1回のみ使えば良い。掃除機でよく掃除する。
- ダニの歩行速度皮層では 2,5/分 20℃以下動かない。
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疥癬はふつうに接しているくらいではうつらない
- 疥癬は隔離しなくて良いが病室を変わる時はベッドごと移動させる。
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個室隔離が必要なのはノルウェイ疥癬のみである。
- 個室の殺虫剤、散布はノルウェイ疥癬の隔離室にのみ必要。1回のみで充分。
- 疥癬が減らないのは誤診とステロイド剤の誤用によることが原因の一つになっている。(セレスタミンも)
- 早期診断早期治療が肝心。
この文書は、大滝倫子先生が平成13年2月9日(金)西区在宅医療研修会・西区学術研修会(会場:福岡市西保健所)において講演されたものを、
南川整形外科病院篠原婦長が書きとめ、それをさらにもう一度大滝先生に添削していただいたものである。
御多忙な中、当文書の添削校正に尽力していただいた大滝先生に深謝いたします。向野 2002.6.20