2. 室内環境 2.1清浄度区分
日本病院設備協会規格・病院空調設備の設計・管理指針 HEAS-02-1998 より (6〜12ページ)
2.1.1 基本方針
施設内の各室(区域)は、表2.1-1に示す清浄度クラスに従って分類し、その室の用途に適合する空気清浄度を維持しなければならない。
なお、全館空調を行わない場合であっても、清浄度クラスT、UおよびVの区域ではこの基準を順守しなけれぱならない。また清浄度クラスWの区域ではこの基準を順守することが望ましい。
清浄度クラスXおよびZの区域では、その用途や機能に応じて、他の系統とは独立した、専用の機械排気設備を設けることが望ましい。
[解説]
- 病院内を全部、清潔区域とすることは理想的であるが、実際的にはこれは不合理であると同時に不経済な施設となる。このため病院内を清浄度によって幾つかに区域分け(クラス分類)し、それぞれのグレードに適合した空調・換気システムを採用することが合理的である。
- クラス分類は表2.1-1のように、要求される清浄度および目的によって、I〜Zに区分する。空調機系統も極力これと整合したゾーニングを行うこととする。
- 館内全域にわたって空気調和を行う全館空調が望ましいが、立地条件または建設費の不足などの理由で、これを行わない場合には、表2.1-1に示す清浄度クラスT、U、V…の順序に従い、空気調和の範囲を次第に拡張していく方法をとることができる。例えば、最初は清浄度クラスI〜Vの各室だけに空気調和を行い、W,Wの各区域では当面、直接暖房と換気で対応しておくなどである。
- 清浄度クラスXおよびZの区域では、汚染物質などの室外への拡散を防止するため、同種の用途の室ごとに系統区分して、個別または共通の機械排気設備を設ける。
- 表2.1-1の参考指標に示した微生物数は、スイスの病院換気規格に採用されているものを参考にして定めたものである。
- クリーンルームのクラス分類および定義としては、米国連邦規格Federa1Standard209(空気1ft3中に含まれるO.5μm以上の粒子数)が、我が国でも慣用的に使用されてきた。しかし、病院のように室内での作業内容が大きく変化したり、測定場所によって異なった値が出現するところでは、工業用クリーンルームを対象としたこの規格と同様な表示をすることは妥当でない。そのため、参考指標としての表記に、これを用いることを避けた。参考のために連邦規格クラス呼称における粒子数、およびそれと微生物数との概略対比などを図2.1-1その他に示す。なお、各国における現在の空気清浄度規格は表2.1-3のようになっている。
- 最終フィルタの性能は、米国、ドイツ、スイスなど各国の病院規格を参照して定めたものである。通常の使用状態であれぱ、表中の最低基準のフィルタを使用することによって、各室の微生物数が参考指標欄に記した値以下にほぼ到達できるといわれ.ている。
2.1.2 清浄度クラスT(高度清潔区域)
高度清潔区域においては、HEPAフィルタを使用した垂直層流方式または水平層流方式のバイオクリーンシステムを適用し、周辺諸室に対して正圧を維持しなけれぱならない。
[解説]
- 高度清潔区域は、超清潔区域(UltraCleanArea)とも呼ばれるもので、空気中の微生物濃度は平常作業時の平均的な値として(以下同じ)、10CFU/m3(0.3CFU/ft3)以下を標準とする。
- この区域では、特に運用面でも汚染防止に留意しなければならない。より高度な清潔性を追求する際には、吸気と手術ガウン内空気を持続的に吸引排除する、呼気排除装置を利用する場合もある。また、層流方式であっても、気流形成上、清浄区域の範囲が限定されることや、垂直/水平方式の使い分けなどにも配慮する必要がある。
- バイオクリーンシステムの方式および特性、ならびにそれを適用する意義などについては第7,6.5項に示す。
2.1.3 清浄度クラスU(清潔区域)
清潔区域では、高性能フィルタまたはHEPAフィルタを使用して空気浄化を行い、周辺諸室に対して適切な空気圧と気流の方向を維持しなけれぱならない。
[解説]
- 清潔区域には一一般手術室、配盤室.既滅菌室などが該当し、上記の清浄度クラスIに次いで清浄度を必要とする諸室で、空気中の微生物濃度は200CFU/u(6CFU/ft3)以下で、なるべく小さな値を目標とする。
- 手術用配盤室における清潔器材の実際の取扱い方は様々であるが、既滅菌器材の包装をとく場合には、高性能のフィルタを取り付けた吹出し口からの清浄空気による層流方式下で作業を行う必要がある。表2.1-1では、これを想定したものである。
- 一般手術室においては近年、手術台周辺の清浄区域の範囲拡大や、より高い清浄度の維持を求めて、風量を増大(全風量で30-50回/h)させている例もある。
- 表2.1-1における無菌製剤室は点滴用薬液注射液などの製造のための室で、これは清浄度Wの調剤室内にクリーンベンチを用いて、この内部で作業を行えば1と同等な清浄度の空間にすることができる。
- 手術室で感染症患者(肺結核症例など)を扱う場合には、清浄度クラスVと同様に負圧維持や排気側処理を要求されることがあるので留意する。
2.1.4 清浄度クラスV(準清潔区域)
準清潔区域では、中性能以上の(中でも高性能側の)フィルタを使用するとともに、清浄度クラスW以下の区域に対し正圧を保ち、適切な空気圧と気流の方向を維持しなけれぱならない。
[解説].
- 準清潔区域には、ICU、未熟児室などが該当し、前述の清潔区域よりもやや清浄度を下げてもよい室である。空気中の微生物濃度は
200CFU/m3(6CFU/ft3)以下を標準とする。
- 分娩室は清浄度Wでもよいという意見が強かったが、未熟児室と同等にするべきだという意見もあり、これに従った。
2.1.5 清浄度クラスW(一般清潔区域)
一般清潔区域においては、中性能以上のフィルタを使用することが望ましく、感染防止対策上も適切な気流が得られるように、吹出し口と吸込み口の位置関係などを検討しなけれぱならない。
[解説]
- 一般清潔区域には、一般病室、診察室、待合室などが該当し、病院として一般的な諸室を含むクラスである。空気中微生物濃度は200-500CFU/m3(6〜15CFU/ft3)を目標とする。
- 病院内では一般的区域であっても空調運転時の室内気流分布には留意することが必要で、汚染された空気が極力患者と接しないように、吹出し口・吸込み口の配置計画を行う。
- 人工透析室では、室内での医療内容によって、要求される溝浄度が異なるので留意する(7.11.1参照〕。
また、臭気対策として外気量をさらに多くとる場合もある。
2.1.6 清浄度クラスX(汚染管理区域〕
汚染管理区域では、室内圧を周辺区域よ
りも負圧に維持し、室内の汚染空気が室外
に漏出することを防止しなければならない
[解説]
- RI管理区域や細菌検査室、解剖室などの汚染管理区域では、室内圧を負圧として、室内空気の室外への漏出を防止しなければならない。なお、室内の清浄度に関してはクラスWまたはそれ以上を適用するべきである。
- 空気感染する疾患をもつ患者を隔離する感染症病室などで、同時に清浄度の高い負圧室を維持する必要がある場合には、前室を設けて前室の空気清浄度を一層高くし、また廊下側の扉と病室側の扉が同時に開放されないような配慮をするとよい。さらに厳密な管理を要する場合には7.3.5(2)に示すように前室を2段に設けることも考えられる。
- 霊安室で線香などを用いずに、そのにおいが問題とならない場合には、W一般清潔区域に含め、全排気方式としなくてもよい。
- 室内で局所的に負圧箇所をつくるため、また汚染空気を拡散させないで速やかに排除するため、安全キャビネットを利用したり、解剖台から直接排気するなどの局所排気方式が有効である。とくに感染症例などを解剖する場合には、垂直層流方式を適用し、大風量とすることが望ましい。
- 室内空気の排気側には、汚染物質を除去するためのフィルタを必要に応じて設置する。
- 当該室の使用時間外でも、負圧維持のために必要に応じて排気ファンを継続運転したり、また病棟の共用便所などでは夜問用に小風量の排気運転が行えるシステムを構成することが望ましい。
2.1.7 清浄度クラスY(一般ゾーン・一般区域)
一般ゾーンの一般区域にあっては、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(ビル管理法)に準拠しなければならない。
[解説]
- 空調面からは病院特有ではない一般的な居室であり、特に清浄度に関する規定を設けなくてもよい室である。しかし、ビル管理法の当該事項には準拠したものとする(表2.1-4参照)。
解説・表2.1-4中央管理方式の空調設備の基準(ビル管理法の値)
浮遊粉じんの量 |
空気1uにつき0.15mg以下 |
一酸化炭素の含有率 |
10ppm以下(厚生省令で定める特別の事情がある建築物にあっては、厚生省令で定める数値) |
二酸化炭素ガスの含有率 |
1000PPm以下 |
温度 |
1)17-28℃
2)居室における温度を外気の温度より低くする場合は、そ
の差を著しくしないこと* |
相対湿度 |
40-70% |
気流 |
O.5m/s以下 |
*建設省告示(昭和45年)では、おおむね7℃以.下とされている。
2.1.8 清浄度クラスZ(一般ゾーン・汚染拡散防止区域)
汚染拡散防止区域では、強制排気設備を設け、室内の汚染空気が外部に漏出しないように注意しなけれぱならない
[解説]
- 室内で粉じん、湿気、臭気などを多量に発生する室で、これらを室外に漏出させないために室内空気は負圧にする必要がある。室内の清浄度は一般区域(清浄度クラスW)よりも低く考えてよい。
