日本の病院で現在広く使用されている皮膚消毒の手技は見直すべき余地がある。
皮膚消毒用の医療材料は、乾いた綿球がカット綿の入った容器に消毒液を注ぐというものである。
消毒液はアルコール、ポビドンヨード、もしくはベンザルコニウム等である。
日本でのある研究によると、この万能壺とピンセットはまず中央材料室でオートクレーブ滅菌される。
一旦用意されると途中での洗浄なしで、時には1カ月から6カ月間、消毒液の継ぎ足しが行われる。
ほとんど永久的に継ぎ足しが行われていたという例もある。
消毒液の壺は病棟患者のベッドサイドに設置されるかまたは、包交車(クラッシュカート)に置かれている。
アルコールの例をとると、何度も使われる度に蓋が開けられ、時間の経過と共にその溶液は蒸発していく。
例えばアルコールが50から60%であるとすると時間の経過と共にその消毒力が弱まる。
消毒薬を準備する時、水道水で希釈されることも稀ではない。
消毒液に浸された綿球を取り出すのに普通カンシやピンセットが用いられる。
消毒液に浸された綿球を手袋なしの指で取り出す場面もたびたび認められる。
綿球に吸収されている薬液で余分と見なされた量は、指で絞って万能壺に戻されるか、もしくは廃棄物入れにしずくが落とされることもあり得る。
この方法、このプロセスによって突然の感染症の大伝染が報告された例もある。
本年2000年7月に愛知県で7人もの死亡を引き起こしたB.セパシア菌による院内感染のあった病院で、万能壺を廃止した。
これも寄与し、この病院でのそれ以後の院内感染の改善が著しかったとう報告がある。
また別の慶応大学病院での調査では、同病院内の病棟の万能壺からエンテロバクター、アシネトバクター、真菌の培養が検出されたとある。
一つの万能壺は一日平均28回蓋の開け閉めが行われたと記録されている。
万能壺の中身である薬液の塗布素材、アプリケータ自体も改善の対象である。
ある研究では有機繊維である綿繊維はバクテリアの栄養源になり得るとされた。
皮膚消毒中にこの綿繊維は正常皮膚上または傷口にも残るので問題である。
米国では、万能壺のメンテナンスには一日の最後に残りの薬液と綿球を全部捨て、容器は滅菌しなければならないのが標準である。
米国では下記の理由で過去に万能壺はほぼ絶滅し、ディスポーザブル消毒剤の時代となった。
万能壺にはアルコールと容器をめぐって潜在的な交差感染リスクと引火のリスクがある。
経済的には、1日毎の残留アルコールと綿球の廃棄のコスト、万能壺管理と中央材料室で万能壺を準備し、
使用後には容器とピンセットをオートクレープ滅菌することに費やすナースの労働費の高騰がある。
ディスポーザブル消毒剤は、経済的にも安価で、手技を行うナースにとって便利で、
最も重要なことに、皮膚消毒中の細菌学的汚染の機会を事実上消失させる。
病院サプライ、日本医科器械学会・病院サプライ研究会、Vol.5, No.1, 2000、11