医療現場におけるノロウイルス胃腸炎アウトブレイク予防対策ガイドライン2011(勧告)

http://www.cdc.gov/hicpac/norovirus/002_norovirus-toc.html

患者のコホーティングと隔離予防策

1.嘔吐や下痢への暴露を避ける。ノロウイルス胃腸炎と合致する症状があるなら、患者は個室で接触予防策の下に置く。(カテゴリーIB)

1a.ノロウイルス胃腸炎の患者が個室に収容できないときは、無症状の患者から彼らを分離するように努めるべきである。施設の特徴に応じて、アウトブレイク中の患者コホートへの取り組みは、多人数部屋に患者を配置すること、あるいは患者コホートのために施設内の患者ケア区域、隣接する部分を指定することを含む。(カテゴリーIB)

2.アウトブレイクの間は、感受性のある患者への暴露を防ぐために症状が収まってから少なくとも48時間は接触予防策の下に置く。(カテゴリーIB)

2a.医学的に複雑な患者(たとえば、心血管疾患、自己免疫疾患、免疫不全、腎疾患)にはより長期の隔離・コホート予防策を考慮する。というのは、彼らは下痢長期化のエピソードを経験しがちであるから。これらの疾患あるいは他の合併症がある患者は再発の可能性もある。施設は、臨床的判断に基づいて、より長い隔離期間を選択してよい。(カテゴリーII)
2b.乳児や幼児(たとえば、2歳以下)でのアウトブレイクでは、症状が消えた後でも、隔離・コホート予防策の期間を延長することを考慮する。というのは、長期のウイルス排泄と環境汚染の可能性があるからである。乳児では、症状消失後5日まで延長することを考慮すべきエビデンスがある。(カテゴリーII)

3.ノロウイルスの長期排出と感受性患者への感染リスクの間の関係を理解するために、更なる研究が必要とされる。(勧告なし/未解決問題)
4.ノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクの間は、病棟あるいは部署内での患者の動きを最小にすることを検討する。(カテゴリーII)

4a.非汚染臨床区域へのノロウイルスの環境汚染と伝播の可能性を減らすために、不可欠のケア・治療のためでないならば、有症状および回復患者が患者ケア区域から離れることの制限を考慮する。(カテゴリーII)

5.ノロウイルス・アウトブレイク期間中は、グループ活動(例えば、食事会)を延期することを検討する。(カテゴリーII)
6.最近のノロウイルスのアウトブレイクに罹患した疑いがあり、そこから回復した職員は、アウトブレイクが終息するまで、有症状患者のケアに最も適していると思われる。(カテゴリーII)

手指衛生

7.ノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクが起きた患者ケア区域における医療従事者、患者、面会者の間で手指衛生が遵守されることを積極的に促進する。(カテゴリーIB)
8.アウトブレイクの間は、ノロウイルス胃腸炎の患者(疑いを含む)をケア後あるいは接触後には、手指衛生のために石けん流水を用いる。(カテゴリーIB)

8a.その他の手指衛生の適用(すなわち、ノロウイルス患者に接触する前)については、2002年HICPAC医療現場における手指衛生のガイドラインを参照する。
それには、FDA準拠アルコールベースの手指衛生剤使用の適応も含まれている。(カテゴリーIB)

8a.1 ノロウイルス胃腸炎のアウトブレイク中は、他のアルコール・非アルコールベースの手指衛生製品に比較して、より好ましい活性剤として、エタノールベースの手指衛生剤(60-90%)を考慮する。(カテゴリーII)

8b.ノロウイルス・ヒト株、あるいはノロウイルス・ヒト株に収束する性質を持った代用ウイルスに対する、アルコールベースの手指衛生剤の効果を直接に評価するために、更なる研究が必要である。(勧告なし/未解決問題)

9.非アルコール性手指衛生剤と同様に、ノロウイルスに対するアルコール製剤の殺ウイルス能力を評価するために、より多くの研究が要求される。(勧告なし/未解決問題)

患者の転送と病棟閉鎖

10.ノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクの大きさを弱める方法として、新たな入転院に対し病棟閉鎖を考慮する。病棟閉鎖の閾値は変化するし、感染対策職員によるリスク評価と施設の指導力に依存する。(カテゴリーII)
11.接触予防策を維持することができる受け入れ施設への転送に制限することを考慮する。さもなければ、患者がもはや接触予防策を必要としなくなるまで、転送を延期するのが賢明であろう。アウトブレイクの間は、ノロウイルス胃腸炎から回復した医学的に適切な個人は退院して帰宅できる。(カテゴリーII)
12.有症状ノロウイルス患者を指定し、施設内部あるいは施設間でこのような患者を転送する前に、受け入れ医療施設あるいは職員に通知するシステムを実行する。(カテゴリーIC)

間接的患者ケア職員−医療における食品取扱者

13.医療現場における食品に関連したノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクを予防するために、食品取扱者は食品や飲み物に接触する、あるいは準備する前に、手指衛生を必ず実行しなければならない。(カテゴリーIC)
14.食品を取り扱い、準備し、分配する職員は、彼らが急性胃腸炎の症状を呈した場合は、就業停止されなければならない。職員は、症状が消失してから少なくとも48時間まで、あるいは地域の衛生規則で要求された期間より長く、職場に戻るべきではない。(カテゴリーIC)
15.アウトブレイク期間中は、患者あるいは職員のためのすべての共有共用の食品を、臨床区域から取り去る。(カテゴリーIC)

診断

16.潜在的なノロウイルス・アウトブレイクの大きさを減じるための迅速な感染対策を実施する一方で、有症状ノロウイルス感染症疑い症例の迅速な臨床的・ウイルス学的確定診断を可能にするための施設ポリシーの作成と採用を考慮する。(カテゴリーII)
17.臨床検査診断法がない場合、あるいは検査結果を得るのが遅れる場合は、ノロウイルス胃腸炎アウトブレイクの検出のために、カプランの臨床的疫学的診断基準を用いる。(カテゴリーIA) *カプランの診断基準@有症状症例の半数以上に嘔吐が見られるA平均潜伏期は24-48時間B平均罹病期間は12−60時間C便培養で菌を検出しない
18.医療現場におけるノロウイルス胃腸炎アウトブレイクに対するカプランの診断基準と他の早期検出診断基準を比較するために、そして、医療現場におけるノロウイルスの集団あるいはアウトブレイクを検出するために追加的な臨床的疫学的データを適用するかどうかを評価するために、更なる研究が必要である。(勧告なし/未解決問題)
19.ノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクが疑われている間は、できるだけ早期に便検体、理想的には急性期(発症2-3日以内)の患者の検体を提出することを考慮する。医療施設は州あるいは地域の公衆衛生当局に、検査のために取得すべき検体のタイプと数についてコンサルトすることが指示される。(カテゴリーII)
20.ウイルス性胃腸炎の疑い症例の検査のために、有効な検査診断プロトコールを使用する。(例えば、CDCのノロウイルス診断検査のための最新の勧告)(カテゴリーIB)
21.ノロウイルス・アウトブレイク中に、環境検体の収集と検査をルーチンに行なう必要はない。疫学的証拠によってサポートされる場合、環境のサンプリングは、特殊な汚染源の確定のために有用と考えられる。(カテゴリーII)
22.便検体が取れないとき、吐物から得られた検体が、ノロウイルスの検査同定のために提出される。吐物の検査は便検体と比較して、ウイルスの濃度が低いので、感度も低い。(カテゴリーII)

個人防護具

23.ノロウイルス感染症が疑われるときは、感染性の吐物や便に暴露する可能性を減らすために、患者ケア区域に入る人は、接触・標準予防策に準じてPPEの使用(すなわち、入室時のガウン手袋着用)を遵守することが推奨される。(カテゴリーIB)
24.患者ケアの間、とくに嘔吐している患者の場合、顔面への飛沫のリスクがありそうなときは、サージカルマスクとゴーグルあるいはフルフェイスシールドを用いる。(カテゴリーIB)
25.ノロウイルス・アウトブレイク中の普遍的手袋使用UniversalGloving実施の有用性を評価するために、更なる研究が必要である。(勧告なし/未解決問題)

環境清掃

26.通行の多い臨床区域と同様に、隔離あるいはコホート区域では、高頻度接触環境表面・器具のルーチンの洗浄消毒を実行する。頻繁に接触する表面には、便器、トイレ、水道の蛇口、手すり、ベッド柵、電話、ドアの取っ手、コンピューター器具、台所調理表面などがある。(カテゴリーIB)
27.患者間の共用される器具は、医療用と宣伝表示されたEPA登録製品を用いて、洗浄消毒する。適用と接触時間は製造業者の勧告に従う。EPAはノロウイルスに対して活性のある製品を、そのサイト(http://www.epa.gov/oppad001/chemregindex.htm)でリストにしている。(カテゴリーIC)
*EPA(Environmental Protection Agency,環境保護庁)
28.ノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクの間は、患者ケア区域および頻繁に接触した表面を洗浄消毒する頻度を増やす。(たとえば、清潔さを維持するために病棟/部署レベルの清掃を1日2回に増やす。とともに、頻繁に接触する表面は、医療用EPA認可製品を用いて1日3回洗浄消毒する)(カテゴリーIB)
29.表面の洗浄消毒は、ノロウイルス汚染の可能性の低い区域(たとえば、トレイテーブル、カウンタートップ)から始めて、高度汚染表面((たとえば、トイレ、風呂の備品)のある区域へと移る。洗浄液のバケツが新たに準備された時、あるいは大量にこぼれた吐物や便を洗浄する時にはモップヘッドを交換する。(カテゴリーIB)
30.ノロウイルス胃腸炎の隔離患者が退院転院した後は、すべての使い捨て患者ケア物品は廃棄し、部屋の未使用リネンは洗濯することを考慮する。施設では、接触予防策中の部屋/区域に持ち込まれる使い捨て物品の数を制限することによって、廃棄物を減らすことができる。(カテゴリーII)
31.ノロウイルス感染症の症状のある患者に対して、台所用品や食卓用食器類のような使い捨て患者サービス物品の使用に関する追加的条項は指示されていない。銀製食器(ナイフやフォーク)と食卓用食器類に対し、標準的方法で通常の処理と消毒を実行する。(カテゴリーII)
32.汚染された患者サービス物品・リネンを操作する際は、適切なPPEの使用を含む、標準予防策を使用する。(カテゴリーIB)
33.患者ケア区域では、布張りの家具やじゅうたん・カーペットの使用を避けることを考慮する。コレラの物品は完全に洗浄消毒することが困難である。この選択が取れないときは、製造業者認可の洗浄剤・界面活性剤を使って、張り布から吐物や便のような汚れをすぐに洗浄する。患者ケア区域での座席は、ルーチンの洗浄消毒に耐えられるものを選ぶ。(カテゴリーII)
34.病室の布張り家具は患者退院時にスチーム洗浄することを考慮する。これらの物品の洗浄消毒について製造業者の勧告に従う。適切な洗浄消毒ができない物品は廃棄することを考慮する。(カテゴリーII)
35.アウトブレイク中は、カーテン(privacy curtain)は、それらが目に見えて汚れたとき、患者の退転院時には交換する。(カテゴリーIB)
36.汚れたリネンは、ウイルスが飛散するのを避けるために、それらを振とうさせることなく、取り扱う。交差感染の可能性を最小限にするために、適切なPPE(例えば、手袋やガウン)使用を含む、標準予防策を使用する。(カテゴリーIB)
37.二重バッグ、焼却、洗濯の改良は、汚染リネンの操作処理には指示されない。(カテゴリーII)
38.消毒剤を使う前に、表面や患者器具は良く洗浄する。ノロウイルス有効の表示のあるEPA認可製品の、最適の消毒剤希釈濃度、適用、表面接触時間について、製造業者の勧告に従う。(カテゴリーIC)
39.洗浄消毒剤のノロウイルスに対する有効性を明らかにするために、代用ウイルスを使うか、ヒトノロウイルス培養系を使うか、更なる研究が必要である。(勧告なし/未解決問題)
40.ノロウイルスの環境汚染を減らすための、噴霧、紫外線、オゾンミストの有効性と信頼性を明らかにするために、更なる研究が必要である。(勧告なし/未解決問題)
41.ノロウイルス感染症の罹病期間と重症度を弱める可能性のある治療薬の有用性を評価するために、更なる研究が必要である。(勧告なし/未解決問題)

職員休職および方針

42.ノロウイルス感染症に合致した症状のある医療従事者の病気休暇方針を作成し、遵守する。(カテゴリーIB)

42a.罹病職員は症状消失後最低48時間は就業停止とする。職員が職場復帰したときは、頻繁な手指衛生の励行の重要性(とくに患者接触の前後)を徹底する。(カテゴリーIB)

43.ノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクが起きたときは、職員コホーティングのプロトコールを決定する。病棟での一患者コホートに対するスタッフケアを保証し、患者コホート間を移動させない。(たとえば、患者コホートは、有症状患者、無症状暴露後患者、無症状非暴露患者のグループを含む)(カテゴリーIB)
44.ノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクが起こっている区域における、必須でないスタッフ、学生、ボランティアの作業を禁止する。(カテゴリーIB)

面会者

45.急性胃腸炎(たとえば、ノロウイルス)アウトブレイクに対する、面会者の方針を決定する。(カテゴリーIB)
46.ノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクの間は、施設内の影響を受けた区域では、必須でない人の面会は制限する。(カテゴリーIB)

46a.これらの影響を受けた区域で、アウトブレイク中に面会者の権利を継続する必要があるなら、ノロウイルス感染症に一致した症状のある面会者をスクリーンし、面会禁止にする。そして彼らが手指衛生と接触予防策を遵守することを保証する。(カテゴリーIB)

手指衛生

47.ノロウイルス胃腸炎アウトブレイクが認識された起点およびアウトブレイクの期間中、スタッフ、患者、面会者へ教育(ノロウイルスの症状の認識、感染予防、伝播様式を含む)を提供する。(カテゴリーIB)
48.アウトブレイクが起きる前に、年度トレーニングの一環として、そして散発症例が検出されたときに、ノロウイルスの予防とマネジメントに関して、教育集会を提供し、資源が利用できるようにすることを考慮する。(カテゴリーII)

積極的な症例発見

49.医療施設で急性胃腸炎症例の集団が検出された場合、積極的な症例発見を始める。特殊な症例定義を使う。暴露および有症状患者・スタッフの両方を追跡するためにリスト作成を実践する。患者の配置と転帰に関する情報と同様に、関連する疫学的、臨床的、人口統計的データを収集する。(カテゴリーIB)

連絡と通知

50.ノロウイルス胃腸炎アウトブレイクの管理・報告に必要な連絡網を明記する文書化された方針を作成する。臨床スタッフ、環境サービス、検査部門、医療施設部門、公報業務などの重要な利害関係者は、州および地域の公衆衛生当局と同様に、この枠組みの中に含まれるべきである。(カテゴリーIB)

50a.ノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクが疑われた時は職員と面会者にタイムリーな連絡を提供する。また、伝播の拡大を防ぐために守られるべき方針と条項の概要を説明する。(カテゴリーIB)

51.すべてのアウトブレイクと同様に、ノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクが疑われたなら、州および地域の公衆衛生規則に要求されるように、適切な地域および州の衛生部門に通知する。(カテゴリーIC)

向野粗訳 2011.10.23